TMS

外来でOTをやっていると、OTの先生から「toroさんTMSって知ってます?」と唐突に聞かれました。書き忘れましたが入院しているときと外来ではOTの先生は代わり、外来担当のこのOTの先生は人当たりもよくいつもマスクをしているのでわかりませんが恐らく美人です。ベテランで物凄く色々なことを知っている勉強家の先生です。
入院している間散々検索しまくって知っていたので「J大系の病院でやってる頭の磁気による刺激ですよね。入院しないとダメなのでは?」
「そう、ここにはないし本当はJ大病院とかK大病院とかに入院してじっくりリハビリしながらやるのが良いので時間のある学生さんとかには勧めているのだけど、toroさんはもうすぐ復職なんですよね。時間がなければ通院でやってるクリニックがありますよ」
と検索しても出てこなかった(後からクリニック名で検索するとしっかり出てきましたが)情報を教えてくれました。
「うーん、でも主治医が何と言うかなー」と僕が渋っていると、「ダメ元で相談してみては?」と背中を押してくれました。
次の主治医の面談のときTMSについて相談してみると、「エビデンスがねー。ちょっとどうかなー?脳に刺激を与えるということはてんかんのリスクがありますよ。てんかんを発症すると車を5年間運転できなくなりますよ?」と脅されてビビりましたが、
「クリニックに行って相談してみたいと思います」と言うと何故かあっさり「いいですよ」と言ってくれましたのでそのクリニックに行ってみました。
そのクリニックは家から車で30分ぐらいの距離で、昔住んでいたところの近くなので土地勘があります。近くにこういうクリニックがあることも幸運だったのでしょう。
クリニックでMRIを撮って、MRIの画像を見ながら先生が説明してくれます。発症直後のMRI画像は見ましたが半年後のMRI画像を見たのはこれが初めてです。
主治医の予言した通り、右脳の中央にポッカリ大きな穴が空いています。かなりショックを受けました。しかしクリニックの先生はそこには触れず、輪切りにした目のあたりの画像を見ながら話します。
「この右脳からつながる神経が萎縮を始めている、これをワーラー変性と言う。」と言ってパパっとPCを操作してgoogleで「ワーラー変性」と入力して検索画面を出します。
左半身を使わない、使えないからここが萎縮するのだ。磁気を当て誘導電流で脳の血流を良くし活性化してここに至る信号を強くし、神経の萎縮を防ぐ。
とこんなようなことをささっと言いました(間違いがあったらスミマセン)
「発症から何年もたった人がいろいろ調べて藁をもすがる気持ちで来るが、あなたのような発症から半年しかたっていない人が来るのは珍しい。」
「磁気治療の適用は十分にあるが、どうですか?やってみますか?」と最終的には僕の判断に委ねますので用意してきた質問を言います。
てんかんの恐れは無いのか?」「TMSは保険が使えない自由診療じゃないのか?」「エビデンスは?J大でやってるのは?」
詳しい回答について記述するのは間違いや問題があるかもしれないので控えておきますが、先生の竹を割ったような矛盾のない当意即妙の受け答えに感心し、
あと、高い安いの問題ではないと思いますが僕にとっては重要な費用も案外というより凄く安かったこともありこの先生ならば、と思い「まだ人生長いし子どもも小さいので少しでも良くなりたい、お願いします」と言いました。
「あなたは45歳か・・・まだ40年はあるね、やりましょうか。」でこの日は終わりました。
後日、指定された別の病院に”脳血流シンチグラフィー”というのをやりに行きました。この検査で脳のどこの部分の血流が低下しているかを調べ、そこに磁気を当てて血流を良くする、ということが目的のようです。
血流測定はガンマ線を発する特殊な薬剤を注射し、脳に集まった薬剤の発するガンマ線を特別なカメラで見るものです。この薬剤は”賞味期限”が非常に短いようで、予約時間の変更やキャンセルはできないと説明がありました。
ちなみに事前にネットで調べましたが、この薬剤は何億ベクレルといった放射能を持つもののようです。1回の検査での被曝量は何十ミリシーベルトです。検査技師の人は全く説明してくれませんでしたが。
福島の事故で食べ物が何百ベクレル・・・汚染水が何ミリシーベルト・・・。という数字とは桁違いです。放射能を盲目的に恐れている人には到底許容出来ない数字だと思いますので検査技師は説明しないのかもしれません。僕は理系の端くれとして数字で理解できますのでもちろん受けますが。
CTやMRIのようにドーム型の機械の中に入ってゆく、という検査ではありません。閉所恐怖症でも十分許容できると思います。また、脳血管の奇形を調べる時に使った造影剤のように頭の中が熱くなることもりませんでした。
仰向けになってボーッっとしていたら終わりました。後日クリニックに行くと、結果はオンラインで送られていたようです。
画像を見ながら先生が「脳のここの血流が落ちているのがわかりますよね、前頭葉の運動野と小脳です。小脳は磁気を当てることができないので前頭葉の運動野に当てます。」と説明してくれます。
「どれくらい通うんでしょうか?」と聞くと「人によりますが50~100回くらいかな。」えっ、そんなに通うの?週1でも1年以上じゃないか、と思いましたが少しでも良くなるのであれば通います。
別の部屋に行き座り心地の良いソファーに座って頭に8の字型のコイルを当て、磁気を当てます。カチカチッという連続したクリック音と共に頭をコツコツ叩くような刺激がありますが、決して痛くなく不快でもありません。
「磁気の深さを決めます」と言われ、左脳に磁気を当てると面白いように右手が勝手に動きます。脳の司令で手が動いている証拠ですよよね。
治療時間は1回20分です。残念ながら今の所これと言った効果は実感できていませんが、OTの先生は「明らかに手の緊張が落ちている」と言います。TMSをやった後のリハビリが重要らしいです。あと、手のしびれが少し減ったような気がします。あくまで”気がする”程度ですが・・・。
ただ、僕だけかもしれませんがTMSをやった後はすごく疲れます。しかし、主治医が脅したてんかんは起きていません。