退院のゴタゴタ1-ケアマネ-

そうこうしているうちに回復期病院に入院してから3ヶ月経ち、主治医との定期面談で「そろそろ退院の日を決めましょうか」と言われました。
早くこんなあいさつもできないような人がたくさんいる環境から脱出したい、という気持ちもありましたが、まだ手も足も元通りには動きません。もう少しリハビリして良くなりたい、という思いも強いです。入院するときに「入院期間の目安は3ヶ月」と言われていましたが、
脳血管疾患で入院できるのは最長で6ヶ月だとネットで調べてわかっていましたし、同じ病棟で脳出血を発症した同年代の男性が6ヶ月いたので「6ヶ月いられるんじゃないですか?もっとリハビリしたい」と言ってみましたが、
主治医は「toroさんは高次脳機能障害も無いようだし6ヶ月は無理、せいぜいあと1ヶ月でしょう」と突然言われびっくりです。退院の準備は何もしていません。
うわーと思いましたが「わかりました。あと3ヶ月やそこらでリハビリしても手は元通り動くことは無いでしょう、退院の準備をしますので具体的な日程についての回答はちょっと待ってください」と言いました。
横に居た妻は涙ぐんでいました。「手が動かないなんてかわいそう」と。もしかしたら家で私を介助して苦労する日々を思い浮かべて涙していたのかもしれません。
僕を介助するために妻は僕と結婚したのではない。迷惑をかけないようにこれからのことは自分でできるようにするためにも自分で考えます。
さて、主治医に啖呵を切りましたが、準備って何をすればいい?家に帰ってリハビリはどうするんだ?家の改修は?復職までどうすればいい?ぐるぐると悩みます。
同室で唯一話が通じる紳士ですでに退院が決まっていたDさんに雑談レベルでまず相談してみました。「ケアマネージャー(以下ケアマネ)決めて家の改修の相談したよ」
病院からは一切そんな事言われませんでした。OTでお風呂に手すりを付けるならどこがいい?とかお風呂の椅子の話を聞いたりしましたが、誰もケアマネ経由でやるって教えてくれませんでしたし、ケアマネのケの字も話題に上がる事はありませんでした。
穿った見方ですが、回復期病院はとにかく退院させて自宅に帰すことが至上命題であり(お上からの病院の評価に繋がる)、その後のケアはしないということなのでしょう。
年齢の面もありますが、復職させることにはあまり重きをおいていないようです。復職してもらって再び税金や保険料を使う身から納めてもらう身になってもらおうとは考えていないのでしょうか?
ケアマネの存在自体は社労士試験の介護保険法で知っていました(正確には介護支援専門員、と言います)。ケアマネにケアプラン(居宅サービス計画)を作ってもらうのも無料だと知っていましたが、まさか自分が使うようになるとは・・・。介護保険って65歳以上が使うものじゃないのか?
そうか、僕は介護保険法の第2号被保険者で脳血管疾患という特定疾病にかかっているため65歳以下なんだけど介護保険の保険サービスを受けることができる当事者なんだ。困りました。まずケアマネを決める?どうやって?
主治医が回診に来たとき聞いてみましたが「選択肢はあまりない、病院が決めてくれると思いますよ」と言われ、後から主治医に言われてきた病院のソーシャルワーカーに聞くと、
私の住んでいる市のケアマネの一覧をA4用紙で5枚ほど持ってきて、この中から選んでくださいと言われました。
選択肢がないって言ってたじゃないか、こんなリストからどうやって選べば良いのでしょうか。目隠ししてこの紙にダーツを投げて、当たったケアマネにすれば良いのでしょうか?
確かに介護保険法には「保険給付は被保険者の選択に基づき適切なサービスを行わなければならない」って書いてありますが(何年か前の社労士試験の問題に出てましたので覚えています)
が、選択できる材料はケアマネの名前と名前から類推できる性別と住所と所属する事業所くらいしかありません。間違ったケアマネの選択で適切なサービスが受けられるのでしょうか?
僕の退院後に長年付き合うかもしれない人を、こんな乱暴な方法で選んで良いのでしょうか。
ちなみによく見ていたブログ主の方も選択方法がわからなかったようで、渡されたリストの一番上のケアマネに電話をかけたようです・・・。引っ越し会社にア◎◎とかア◎◎とかアで始まる社名が多いのと同じ理由ですね。
住所を見て私の住んでいる地域の近くの方をスマホで調べながらざっと見てみましたが、どうやら皆さん介護老人保険施設に属しているケアマネのようで、
こんなのに頼んだら利害関係のあるその施設に無理やり入れられるんじゃなかろうか?リハビリという名目でご老人たちと輪になって歌ったりお茶したりするんだ・・・と不安が発生します。
無い知恵を振り絞って考えます。特定の施設に属しているケアマネではだめだ、そうだ、独立系のケアマネがいい、できればこういう仕事は女性が色々面倒見てくれそうだ、
妻のママ友に介護のお仕事をされている方がいたので、その方に聞いてみようということで妻経由で「いいケアマネ知らないでしょうか?」と聞いてみました。
すると「ケアマネは色々お付き合いしているのでわからない、ちなみにうちの事業所にはケアマネはいない」とのことでした。ある程度想定していましたががっかりです。
うーんどうしよう、と悶々としながら、しょうがないこうなったらもらったリストの上から順番に電話かけて面接するかな?と思っていましたが、その”ケアマネ騒動”
(後から考えると僕がタコ踊りしていただけですが)の日にPTをしていたとき、たまたまその日は担当のPTさんが出張で代行が非常勤のPTさんでした。
非常勤なら色々事情を知ってるだろうとそのPTさんに話をしてみたところ、なんとその非常勤のPTさんは家の近くの訪問看護ステーションの方で、
よくお付き合いしている優秀で経験豊富なケアマネさんがいますよ、ということで、そのケアマネさんを紹介してもらいました。
紹介された方に電話をして「ケアマネを探している」と言うと「ご両親どちらが要介護状態ですか?」と聞かれます。これには苦笑しました。
「僕が要介護状態です」と言うと向こうも察したようです。病院に来てくれて面談することになりました。
来てくれた方は独立系のケアマネさんで僕より年上で、いい意味でお節介な面倒見のいい近所のおば・・・お姉さんのような感じで頼れそうです。経験も豊富そうです。まさに探していた人だ、と思いました。
まず僕は開口一番「復職したいんですが、お手伝いしてもらえるでしょうか。」と言いました。
ケアマネさんは「私の見ていた方で復職された方は何人かいるからアドバイスはできると思います」と言ってくれました。決定です。その場でお願いしました。
大変失礼ですが復職の必要のない老人だけを相手にされているケアマネさんは僕には必要ありません。
僕は必要にかられて復職せざるを得なかったので色々考えましたが、何も自分から動かなかったら家で寝たきり、もしくは”老人向けの保育園”で老人たちの輪に入って歌って一生を過ごしていたのでしょうか?今でも恐ろしくて身震いがします。
人生100年時代、ただ家に帰すことだけではなく地域でどのように自活できるようにするかをサポートするのも医療・介護の仕事だと思いますがいかがでしょう?
(会社を辞めるつもりは今の所ありませんが)もし社労士になったら地域でこういう分野にも携われたらいいな、という感じです(お金にあまりならないかもしれませんが・・・)。