ST

STの先生は最初僕と同年代の男の先生でしたが、すぐ僕と同年代の女性の先生に変わりました。
こちらに移ってすぐなぜか?僕が住んでいる県の県立高校入試の国語の問題をやりました。1問間違えただけだったのでまだまだ知性は残っているなと安心しました。
前述の通り、MRI画像を見て以来ずっと知性が残存しているか、それだけを恐れていました。今後体が動かなくなっても頭が働けばなんとかなる、と。
リハビリの内容は発声練習や口のマッサージなどはせず、ずっとナンプレや間違い探しなどをやっていました。
間違い探しで最初左側の見落としが多く「左半側空間無視がある」と言われていましたが左のほうを努めて見るようにしていたらそのうち見落としもなくなりいつの間にか良くなっていました。
こんな遊びのようなことでも実は意味があったのですが、半側空間無視も良くなりSTってあんまり意味ないんじゃないかな?と思い始めて、
主治医に「STの時間を減らしてOTとPTに充ててください」とお願いしました。
その結果STは最終的に1日1単位(20分)まで減り、その分OTとPTが増えました。言ってみるものです。
ただ1単位残っています。毎回雑談から始まるのですが雑談は「朝食(昼食)に出たメニューは何ですか?」
「本日のテレビのニュースを要約して言ってみてください」というものです。前者は毎回STの前に食堂にあるメニュー表を確認してから行くので間違えないのですが、
ニュースについては閉口しました。病室のテレビはカード式でお金がもったいなかったのとニュースについては近年のマスコミの偏向報道には目に余るものがあるのであまり見ていません。
同じ時間を使うなら試験勉強のほうがよっぽど有意義です。ニュースについては前述のDさんからの新聞に頼る他ありません。
ある日デイルームでテレビがつけられていたのでタダで見られると喜んで見たお昼のワイドショーが韓国の法相が逮捕されそうとか、
韓国の輸出規制は・・・とか韓国の話題ばっかりだったので”何故日本のテレビなのに日本の話題をやらない?”と閉口し、
STでニュースについて聞かれたら毎回韓国の話をするようになってからはニュースについての話題はなくなりました。こういう雑談が発声の回復に重要だそうですが、仕方ありません。
そんなある日雑談で「社労士の勉強をしている」と言うと、「では、問題集をやってみましょう」とニュースの話の代わりに問題集の音読が始まりました。
これが結構効いたと思います。STの先生は当然社労士の知識はないので、
「この問題文中に出てくる臨床研究中核病院ってなんですか?」とかわからない単語を聞かれたり、
あと「厚生労働大臣って無茶苦茶仕事多くないですか?」とか素朴な疑問を聞かれたりするのです。この素人の素朴な疑問というのがかなり厄介で自分にも勉強になります。
勉強になり、また物事を順序立てて他人にわかりやすく伝えることの訓練にもなりました。脳卒中のリハビリには資格勉強が効くんじゃないだろうか?というのが私の持論です。
しかし、訓練のフィードバックがあまり無かったようなので、STの先生に「顔の麻痺は良くなったか?」「発声で聞きづらいところはないか?」と毎回聞くようにしていました。
あと第三者の視点として、見舞いに来てくれる妻に同じことを尋ねていました。
社労士試験の受験票用に急性期の病院で撮った写真がありますが、それはそれは能面のようで麻痺が顕著に出ています。
しかし、しばらくして顔や舌の麻痺は良くなりました。今でも顔の左が腫れぼったいような感覚は残っていますが・・・。