OT

OTの先生は若い女性の方でした。かなり勉強熱心な方で、僕が「お茶碗を持てるようになりたい、左手でタイピングとは言わないがシフトキーくらい押せるようになりたい」
と言うと、「具体的な目標を示してくれる方は珍しい」と色々論文を読んで勉強してくれてこうやってみましょう、ああしてみましょう、といろいろ提案してくれました。
僕も「使わないと左手はだめになっちゃいそうだからエレベーターのスイッチとか押してみても良いですか?」など色々提案したりしていました。
義母からは「手はテニスボールをニギニギしたら良くなるって脳出血から回復して今は全然見た目わからない人が言ってたよ」と言ってくれましたが、
OTの先生からは「握る、収縮方向(屈筋)ばかり使うと固まってしまうから、伸ばす方を優先で」と言われていたので義母の言葉はありがたくもスルーしていました。
この方のみならず他のベテランのOTの先生も皆「頑張っちゃいけませんよ、リラックスして力を抜いて」と言っていました。
「力を抜けないから困っているのですが・・・。」と言ってみると「深呼吸して息を吐いてみてください」とやってみると面白いように力が抜けました。
余談ですが僕のちょっと前の上司はMBA(MacBookAirではありません)持ちのユニークな人でよく飲みました。「仕事でも生活でも、脳に良いこと(アハ体験)が一番大事だ」と言っていました。
アハ体験ではありませんがOTでは頑張ることよりむしろ毎回「よし、これができたぞ!」とか「今回はこれができるようになった!」ということを僕の中では重要視していました。
脳に良いに違いありません。絶対に効果が出ることでしょう。
結局今でもお茶碗は持てませんし、シフトキーも押せませんが、腕の上げ下げ曲げ伸ばしはできますし、スーパーでショッピングカートの取っ手を持って押して歩いたり、財布を持ったり杖を持って支えておくこともできます。
主治医に目指すと言われた「補助手」の状態でしょうか。これくらいしかできない、というのが実情です。左手で丼を持って掻き込むことができないのであれだけ好きだった丼物が美味しくなくなりました。
フードコートやパン屋さんで食べ物を載せたトレーを持って運べるようになれると嬉しいのですが・・・。
左手の握力は退院時に測りましたが3キロです。赤ちゃん以下です。到底実用手ではありませんが仕方ありません。
ピンチ力(親指と人差し指で挟む力)のほうが強くそれでも5キロです。袋を開けたり薬の袋を破る時に摘んで持たせますがスルリと抜けてしまいます。
なんとかペットボトルを左手で握って右手で蓋が開けられるレベルです。缶コーヒーなどのボトル缶は滑ってしまい開けられませんが、
全くピクリとも動かなかった手がよくここまで良くなったと思います。OTの先生のおかげです。
退院する時主治医は「手がこれほど良くなるとは当初思っていなかった」とズバリ言われました。MRIの画像である程度予測がつくようです。
人によりどれだけ良くなるかどうかは全く違うと思います。僕はたまたまラッキーだったと思います。努力のせいではありません。小泉元総理ではありませんが「人生色々、脳出血も色々、麻痺も色々」です。
担当に限らずOTの先生は女性が多く、PT室のトレーニングルーム然とした雰囲気に比べていつも活気と笑い声に満ちていたような気がします。明るい雰囲気でリハビリできました。
こちらに移ったときに肩の亜脱臼がひどく痛くて、アームスリングしましょうか?と主治医に言われましたが、
OTの先生は「アームスリングすると腕が固まってしまうかもしれませんよ」と恐ろしいことを言われ、毎日痛みと付き合っていましたが、
ある日別の担当OTの先生から肩を上げ下げすると良いですよと言われ、病室で勉強しているときとか気づいたら肩を上げ下げしていたら、
そのうち肩が痛くなくなり、担当OTから「toroさん亜脱臼良くなっていますね」と言われました。肩の上げ下げのおかげかもしれません。
OTでは手のリハビリの他にも、生活に密着する動作の訓練を実施します。床から立ち上がる訓練や着替える訓練、お風呂に入る訓練などです。
お風呂はどの家庭のお風呂でも再現可能なシミュレーター?を使います。お風呂の深さ、幅は言うに及ばず、床から浴槽までの高さなど全ての寸法を可変できるスグレモノです。
事前に妻に採寸と写真を撮ってもらってシミュレーターで再現したものを使用して訓練しました。
しかし足の緊張が強く、お風呂場で裸足で歩行ができないので、お風呂場には装具をつけたままで入り、お風呂チェアで座って装具を脱いで入るようにしていました。
今では脱衣場で装具を脱いでお風呂場に裸足で入り、風呂場内を装具無しで歩行できるようになりましたが、病気になる前にお風呂のリフォームをしておいたのも良かったです。
TOTOのシステムバスですが、床がタイルではなくほっカラリ床というものになっています。柔らかく滑りにくいので歩きやすく、転倒しても痛くないので足の不自由な方にはおすすめだと思います。
また、調理実習などもありました。僕はやっていないのですが、カレーなどを作っていたようです。
僕も料理を作るのは好きだったのですが、あまりやらないようになってしまいました。作るのは一応できるのですが、後片付けが大変なので、妻に迷惑をかけてしまいますから・・・。
そう言えば、他の人はOTのときPCでエクセルなどやっていましたが、復職のための訓練とかするのかな?と思ってOTの先生に聞くと、
「じゃあPC触ってみますか?」といってくれたのでやってみました。実は病室でこっそりやっていましたが・・・。
右手1本でポチポチと打ちます。両手でブラインドタッチしていた頃の半分以下、1/3くらいののスピードでしょうか。
でもOTの先生が「私の両手で打つスピードより全然早い!」と言ってこのPCのタイピング練習は1回で無くなってしまいました。
僕はやらなかったのですが、職業訓練ではプログラミングとか教えてもらえるのでしょうか?VBは知っているのでpythonとかRubyとか教えてもらいたかったのですが・・・無理ですかね?