急性期病院のこと1

救急車で担ぎ込まれた大学付属病院は新しく立派な病院で地域医療の中核を担う規模の大きな病院でした。
すぐドクターが付いてくれ周囲のスタッフに指示を飛ばしています。若いドクターでテキパキと指示を出しており、何やらドラマの主人公のようです。自分が当事者なのに傍観する余裕がありました。
私は気づかなかったのですが運ばれているとき妻がドクターに「状態はどうでしょうか?」と必死に聞いていたようですが「まず命を助けること優先」と言われ何も答えてくれなかったそうです。
そんなに重篤だったとは・・・。僕は単身赴任しており、週末に家に帰る生活をしていたので、もし単身赴任中に住んでいた単身社宅で発症していたら誰にも発見されず、恐らくそのまま死んでいたでしょう。
CTを撮りすぐにドクターから「右の脳出血です」と言われました。脳梗塞だと思っていただけに意外でした。妻は「手術ですか?」と聞きましたがドクターは「出血量によります」と言っていました。
ドラマと言えば変な話ですがここの病院(というか病棟)の看護師さん達は皆若く美人が多く、特に僕に付いてくれたプライマリーナースの看護師さん(以下Aさん)は
アイドルグループ(AKBというより乃木坂かな?)にいそうな雰囲気の方で、実際この病院のパンフレットやホームページに載っていたので客観的に見てビジュアルに優れ優秀な方だったのでしょう。このAさんが可愛い上に優しく天使のようで、変な話自分が深刻な病気であることを忘れてしまいそうです。回復期病院を退院してから妻に「Aさん出てるよ」とあるテレビ番組を見せられ腰が抜けるほど吃驚しました。
実際後から入ってきたお年を召された男性は、ナースコールのボタンを昼夜問わずカチカチ連打し「Aさんを呼んでくれー」と毎回懇願し、
Aさんが来ると「うどんが食べたい。外に一緒に食べに行こう」とナンパするのでうるさく、しかもAさんは優しいので毎回真面目に対応しており、
うるさく眠れないので最終的に担当ドクターにゾピクロンという睡眠導入剤を処方してもらいました。「依存性はほとんど無い」とドクターは言っていましたが後に回復期病院に移ってもこれがないと眠れないようになり大変苦労しました。
(回復期病院を退院してしばらくしたら無くても眠れるようになりましたが)話が脇にそれました、こういう脱線がままあるかと思います。ご容赦ください。
CTを撮った後、止血の点滴をされてしばらくした後に出血量の確認のため再びCTを撮りました。ドクターから「出血は止まりました。手術の必要はありません。」と言われ、
妻は「手術してください」と言っていたようですが僕自身”こんなに意識しっかりしてるのに脳みそ切られるの嫌だなー”と思い妻に「必要ないんだって」と言いました。後から考えて切らなかったのは正解だったと思います。
そして次に造影剤を入れて脳血管の奇形があるかチェックをしましょうとドクターから提案を受け、妻とリスクの説明を聞きました。
ドクターからは「まず造影剤を入れるカテーテルが血管を傷つけ、プラークが飛んで脳梗塞を発症する確率が○%ある。次に造影剤によりアレルギーを発症する確率が・・」と確率の数字をズラズラ並べられ、
僕も妻も多少ビビりました。だって確率が1%でも発生してしまったら当事者には100%ですよ。
変な話ですがAさんが「ドクターなら失敗しない、絶対大丈夫」(今思うとこんな事を言って問題にならないのでしょうか?)と言ってくれたのでやることにしました。
腕からカテーテルを入れ、造影剤を入れます。頭の奥がカァーッと熱くなります。これまでに体験したことのない、不思議な感覚でした。二度とやりたくありません。
終わってからドクターに「脳の血管に奇形はありませんでした。高血圧性の脳出血ですね。血圧を下げる治療をします」と言われまずはほっとします。
しかしこれからどうなるんだろう、元通りの元気な状態になれるんだろうか、その前に僕が入院中、子どもたちの生活をどうしようかという不安が増大します。