障害年金のこと

具体的な手続きの話に入る前に、ちょっと長くなりますが社労士の勉強も兼ねて障害年金についておさらいしたいと思います。
働いて給料もらってるのに障害年金も受給しようなんてけしからん!と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、基本的に障害年金は「障害」という「保険事故」に対し、保険料を納めていた人への「保険給付」です。

個人的にはアフラックとかと変わりない、と思います。
障害を負い何かと不便で物入りですし、今も僕は頑張って働いて厚生年金保険の保険料を納めていますので、ご容赦ください。
特に厚生年金保険の保険料は月々数万円とバカ高い(失礼)です。ねんきん定期便を見たら僕はこれまでに腰が1000回以上抜けるくらいの金額を納めていました。バンバン申請したら良いと思います。
でも申請の手続きや要件が一見難しそうなので、噛み砕いて説明できればと思います。
ふと思ったんですが、現役社労士や社労士受験生で自分の障害年金を申請して受給した方っていらっしゃるんでしょうか?

 

さて、障害年金国民年金法による障害基礎年金と厚生年金保険法による障害厚生年金があります。(他にも一時金である障害手当金がありますがここでは省きます)
これらは以下の1.~3.の3つの要件を満たすと受給権が発生します。
(事後重症とか基準傷病とかの特例的な年金もありますが)
1.支給対象者の要件
初診日において被保険者であるもの
大雑把に言うと、サラリーマンの方は厚生年金保険の被保険者(=国民年金の第二号被保険者)、20歳以上60歳未満のサラリーマンの妻(同 第三号被保険者)、自営業、学生、無職の方(同 第一号被保険者)は国民年金の被保険者です。

20歳前に初診日のある障害者(生まれつき障害をお持ちのような方)は保険料を納めていなくても、20歳から「20前傷病による障害基礎年金」というものをもらえます。ただしこちらは保険給付ではなくある意味福祉的な年金給付なので、働いて給料をもらっていたりすると減額されたり、色々な制限があるようです。

2.障害状態の要件
障害認定日において障害等級1級、2級(又は障害厚生年金の場合3級)の障害の状態にあること
これは手帳の等級と年金の等級は違うことに注意です。

提出した書類を基に厚生労働省から委託を受けた専属のお医者さんが判定するようです。
基準は複雑でとても覚えられるものではありませんが、資格予備校の先生が言っていたのは、
1級:ベッドから出られない状態
2級:家から出られない状態
3級:働くことが困難な状態
なのだそうです。(厚生労働省の通達なんかを見てもそんなことが書いてあります)
ですが僕は家から出て働きに行ってますが2級になりました。
根拠となる国民年金法、厚生年金保険法ともに古い法律なので、テレワークとかを想定していないんでしょうね。
(いきなり変えられても困りますが・・・)

障害認定日とは:以下の①もしくは②のどちらか早い方で、それ以降の日に申請しなければならないということです。
①初診日から起算して1年6ヶ月を経過した日
②上記①の期間内にその傷病が治った場合においては、その治った日
(症状が固定化し治療の効果が期待できない状態に至った日を含む)
この「治った」という状態ですが、例えば腕を切断した人なんかは傷口がふさがった状態なのだそうです。
原則は①ですが、僕のように脳卒中の場合は②が適用されて初診日から6ヶ月が認定日の場合もあるようです。
でも僕は原則の①で申請したほうが良いと思いますしそうしました。(年金事務所の窓口担当にも言われました)

3.保険料納付要件
①初診日の前日において
②初診日の属する前々月までの国民年金の被保険者期間のうち
③保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が3分の2以上あること
=保険料を滞納している期間が3分の1以下であること
特例として現在(令和8年4月1日まで)初診日の属する月の前々月までの1年間に保険料を滞納している期間がないこと
①の「国民年金の被保険者期間」というのは厚生年金の被保険者(国民年金第2号被保険者)であった期間を含みます。

この障害のもとになった傷病の「初診日」を証明することが障害年金では非常に重要になります。
この「初診日要件」と「保険料納付要件」が重要で、ネットで見るとこれを証明できなくて泣いている人がたくさんいるようです。

つまりズルをしようとして障害を負った後に滞納してた保険料を納めても遅いよ、ということです。

現に年金事務所に相談しに来ている人を盗み聞き(失礼)すると、いの一番にまず「初診日はいつですか?」と聞かれているようでした。
僕は初診日要件も保険料納付要件もはっきりしていたので楽でしたが、あやふやな人は社労士(きちんと障害年金専門を謳っている)にお願いすると良いようです。

収入が少ない等の理由で保険料を納められない方は国民年金なら納付猶予とか免除の制度がありますが、きちんと納付猶予や免除を初診日の前に申し込んでおけば、障害年金は受給できます。
若い人で「将来年金なんか制度が破綻して絶対もらえないから馬鹿らしくて払わない」という人がいますが、サラリーマンは厚生年金の保険料はきちんと給料から天引きされていますし、例えばフリーターの人が若くしてバイクやスキーで大怪我をして障害状態になったらどうするの?と言いたいです。

もうすぐ成人式ですが、僕は新成人の皆さんには「きちんと年金の保険料を納めましょう」とずっと言っています。
年金制度は国家ぐるみの詐欺、絶対破綻する!とか言っている人がいますが、国がバックに付いているので、民間の保険会社の保険と比べて圧倒的に割の良い保険制度だと思います。

さて、上記1.~3.を満たすと、障害年金がもらえます。
障害年金には1階部分の障害基礎年金と2階部分の障害厚生年金があります。
1級、2級の障害厚生年金受給者はもれなく障害基礎年金も支給されます。
なので、
1級:障害基礎年金(定額)×1.25+子の加算+障害厚生年金(報酬比例)×1.25+妻の加算
2級:障害基礎年金(定額)+子の加算+障害厚生年金(報酬比例)+妻の加算
3級:障害厚生年金(報酬比例)のみ
1級~2級でもらえる障害基礎年金の定額の金額はその年によって違いますが令和二年度は780,900円でした。


1級~3級でもらえる障害厚生年金の報酬比例の額はその名の通りもらっていた給料×働いた月数で決定されます。
給料をたくさんもらっていて勤続年数が多い人ほど多くなる仕組みで、若くして障害を負った場合障害厚生年金はどうしても少なくなってしまうのですが、最低保証というのがありまして、働いた月数が300ヶ月未満だと300ヶ月みなしとなり、
2級の障害基礎年金の4分の3に満たない場合その金額(586,300円)となります。

 

2級と3級に天と地ほどの差があると前に言ったのは、2級は障害基礎年金がもらえてしかも子の加算がつくのと、障害厚生年金に妻の加算が付く、という点です。奥さんと子どもがいる家庭だと倍以上は違います。

 

また、障害年金はいわゆる普通の老齢年金と異なる点が大きく3つあります。
①税金がかからない
②働いて給料をもらっていても減額されない(20歳前の障害基礎年金は除く)
③子の加算がつく(正確に言うと老齢厚生年金にも配偶者・子の加算がつきますが子の加算をもらっている人は少数なのでは?)、
精神の障害だと働いて給料もらっていると障害年金自体もらえない場合があるようですがよくわかりません。
本当であれば障害者の勤労意欲を削ぐようなことをしているなあ、という印象です。

 

あと細かい所(他の年金との調整とか)はありますが、障害を負った現役サラリーマンの基礎知識としてはこのあたりで必要十分でしょう。
学校で教えてくれないのですが、このあたりは(保険料を納めていないと障害を負うと大変なことになるとか)高校あたりで教えてもいいのかもしれません。
これだけ知っておけば、社労士の択一式試験でも1~2点取れるかもしれませんね。